本当に「爆買い」なのか?

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10月は中国の国慶節連休でした。「どうせ、中国からの訪日観光客の爆買い」が報じられるのだろうと思い、ニュースやワイドショーを見ていたら、やはり「どうせ...」的な映像が頻繁に流されていました。

僕は、以前上海で働いていたので、頻繁に中国の友人の東京観光のお伴をするわけですが、爆買いに出くわしたことは一度もありません。皆さん普通に買い物をし、普通に食事をし、普通に観光され、満足して帰っていきます。そしてマナーも極めて良い。

なぜ、一部の爆買い現象や、一部のマナーの悪さばかりが報じられるのか?それは、ニュース画像としてインパクトがあるからです。 つまり、視聴率稼ぎのためです。テレビ局では、事前にニュースの「ストーリー」が決まっており、その「ストーリー」に合わせて「取材」が行われると聞いたことがあります。

テレビといえば、独立したてのころ、途方にくれ、夜はテレビばかり見ていました。「Youは何しに日本へ?」という番組がお気に入りでした。日本を旅行し、日本を楽しみ、日本を称賛して帰国する外国人に密着取材する番組です。取材対象の外国人は、ほとんどが白人でした。中国人は皆無に近かったと記憶しています。

では、その白人の訪日観光客はどうでしょうか?今年の夏の或る日の夕方、上野公園でスケートボードに乗り、猛スピードで疾走する若いアメリカ人5名に出くわしました。上野公園は、たくさんの高齢者が散歩をしています。猛スピードのスケートボードにぶつかれば、大ケガをします。

これもまた今年の夏の夜、中央線に乗っていたら、十数名の白人観光客が、缶ビール片手に酔っ払いながら、大騒ぎをしていました。そして、若い女性が乗車してくるたびに、女性の周囲に群がり、話しかけるのです。女性たちは、さぞ迷惑だったでしょう。その十数名の白人観光客たち、最後には、電車内で大合唱を始めました。ドイツ語に近い言葉でしたが、ドイツ人ではなかったと思います。缶ビールの空き缶が入ったコンビニ袋が放置されてあるのを見つけたので、「これは、君たちのだろう!」と言って、突きつけてやると、「ふん」と言って受け取りましたが、当然、そのコンビニ袋は車両内に打ち捨て、新宿駅で降りていきました。

百歩譲って、中国人観光客のマナーが悪いとしましょう。でも、それは、警察に注意を受けるレベルではありません。一方、公園内で猛スピードでスケートボードを乗り回す集団や、電車内で見知らぬ女性を取り囲んで語りかける酩酊者たちは、警察から厳しい注意を受けてもおかしくないレベルです。

テレビ局が勝手に規定したイメージは、いつの間にか、僕たちの頭の中に刷り込まれてしまっています。つまり、
    中国人旅行客:爆買いはするが、マナーは悪い
    白人観光客:日本への賛辞を惜しまず、品も良い
という根拠の乏しい先入観念で、外国人旅行客を峻別する悪癖が、いつの間にか日本人の中に根付いてしまっています。

テレビ離れといいますが、いまだテレビの見過ぎですよ、日本人は。もう、三流ワイドショー番組の映像や、そこに出演する三流コメンテーターの発言で、自分の意見を形成することは止めにしませんか。まずは本を読む。次に詳しい人の意見を聴く。最後に現場を見て、自分なりの定見を持つという習慣を身につけない限り、この国の文化教養レベルは衰えていく一方でしょう。外国人旅行者は瑣末な例えですが、政治の問題然り、経済の問題然り、外交の問題然りです。

最後は、逆に、日本人の外国旅行のエピソード。14年前、初めて韓国を一人旅しました。ソウル市内の博物館に入ると、10人くらいの日本人オバチャン旅行者集団がいました。韓国人の若い男性ガイドが、一生懸命、日本語で説明をしています。そのガイドが「明日は百済の文化を見ます」と言った後の、一人のオバチャンの発言は、生涯忘れません。「百済、クダラナイ文化」と言い放ったのです。

もう一度書きます。「百済、クダラナイ文化」です。周囲のオバチャン軍団は、ゲラゲラ笑っていました。「マナーの悪さ」などといった問題ではなく、文化に対する侮辱です。極端なエピソードですが、あれから14年経ち、日本人の文化教養レベルは、あの日以来のままなのか、いや、むしろ下降しているのではないかと、絶句して立ちすくんでいた韓国人ガイドさんの表情を思い出すたびに、嘆かわしい気持ちになります。